鹿児島の伝統食品「黒酢」
鹿児島の伝統食品「黒酢(くろず)」は、穀物酢の一種です。 色が琥珀色をしているのが特徴で、玄米など精米度の低い米を原料とすることから「玄米黒酢」「米黒酢」と呼ばれることもあります。
発酵・熟成が行われることで、普通の酢よりもコクのある味わいで、香り高いのが特徴で、さらには酸味と甘味のバランスがよいため、料理の味を引き締めるのに使われます。
鹿児島県霧島市福山町では、今から約200年以上も前の江戸時代後期(1800年代)から黒酢造りが行われており、鹿児島を代表する伝統食品となっています。
黒酢の製法
鹿児島の黒酢は「かめ壷仕込み」といわれる伝統製法で造られます。
屋外に並べられた「アマン壺」と呼ばれる黒い陶器製の壺に玄米、麹、水の3つの原料を仕込み、その中で微生物の力を借りながら発酵・熟成させます。
この製法が成立するのは、当地が1年を通して温暖で、最高気温と最低気温の差が少ないため、微生物の活動に適した環境だからといわれています。 しかし、放っておけば黒酢ができあがるかというとそうではありません。 工場で温度などを細かく管理して製造される酢とは異なり、屋外に置かれたかめ壺の中だけで造る黒酢は、黒酢職人たちの長年の経験、そして毎日の忍耐と手間なくては完成しません。
黒酢はなぜ黒い?
玄米酢は熟成期間が長ければ長いほど、色が濃く変化します。
この現象は「メイラード反応」と呼ばれるもので、かめ壺の中でお酢の熟成をすすめるにつれ、タンパク質とアミノ酸、そして糖分が混ざり合うことで琥珀色に変化していきます。
このメイラード反応は、一般的には加熱すると起きるため、加熱した黒酢も市販されていますが、鹿児島の伝統黒酢はかめ壺の中だけで徐々にゆっくりと時間をかけて色が変化していきます。
そのため1年、2年、3年と長期熟成させるほど、琥珀色の濃い黒酢が生まれます。 パンを焼くといい香りがしますが、これは加熱によるメイラード反応により香気成分が発生するためで、黒酢も同じく熟成によりメイラード反応がすすむと、香りと旨味、コクが増してくるといわれています。